2017年2月11日 京都環境文化学術フォーラム記念講演 中村哲 氏(最後の11分間の文字おこし)
2017年2月11日に開催された京都環境文化学術フォーラムにおけるKYOTO地球環境の殿堂入り者#中村哲 氏の記念講演
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一番辛いのは砂漠横断水路で、この横断が一番辛かった。摂氏52度、「もう来年にしようよ」「涼しくなってからやろうよ」というけれども、彼らは決してその手を緩めることがなかった。なぜかというと、ここで働く作業員としての農民は、もうすでに難民としての辛さを嘗め尽くしてきた人でありまして、
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彼らの願いはただ二つだけ。
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ひとつはですね、故郷で自分の故郷で家族と仲良く暮らせること、
もうひとつは、一日三回のご飯が食べれること。
これだけなんです。
この用水路が出来れば、その願いを叶えることができる。それができなければ、再びこの惨めな難民生活が待っておる。
彼らとしては、生きるか死ぬか瀬戸際の仕事だと思います。こういったエネルギーが、全てこの用水路建設に投入され、当時、全線開通24キロメートルが成ったのが2009年8月で、まず開口一番、彼らがなんと言ったかというと、「先生これで生きていかれる!」と、こういった叫びであったわけでございます。
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水があればですね、いろんなことが出来るんですね。
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水は人間様だけのものじゃなくて、水が来ればですね、家畜が、動物がそれを飲みに来る。
昆虫が入ってくる。昆虫を食べる鳥たちが入ってくる。
まさに水を巡って、生きるものの生物のコミュニティが出来るということを、初めて知りました。
訴えて回っているのが、気候変化による被害。最近ですね、気候変化によって雪解けがどっと起きる。そのために、今まで少しづつ溶けておった雪が、ある時期に突然、洪水として流れさってしまう。洪水が通過した後はカラカラの状態。今アフガニスタンの農民を苦しめておるのは、この気候変化でございます
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土地の保水力や貯水力が落ちてますから、地下水も減ってくる。したがって地下水利用の灌漑も出来ない。
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河から取ろうとしても、河の方は洪水で取水口が次々とやられていく状態と。
洪水と渇水が同居する状態。
これを何とかしようということで、今、力を尽くしております。
こういった洪水が日常化する。と同時に、洪水が通過した後は、水が取れずに今度は渇水状態に陥るということで、アフガニスタンの農地は、年々乾燥化が進んでおるという実態。
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これは、私は訴える義務があると思います。
最後に言いたいのはこういうことです。
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私たちはどこに向かっているのか。
今までアフガン復興と言ってですね、お金さえ注げば何とかなる、ということで、これもダメになる。
悪いやつをやっつけるために軍事力を行使すれば何とかなる。
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しかし、その背景には、先ほども言いましたように、自然を無視して人間の経済力や、人間の軍事力だけで何かが解決するような錯覚を世界中が持っておる、ということをアフガニスタンはまさに実証してきたわけでございます。
そうではなくて、私たちが今の自然と折り合いながら、如何に私たちの生命を持続していくか、これが世界中で問われている中、これは一つの試みとして、アフガニスタンだけで通用することかもしれませんけれども、その根底にある考えは皆さんが思っておられることと全く同じであります。
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軍事力だけで、武力が強ければ何でもできるのか、経済力が豊かになれば何でもできるのか、という錯覚をまず世界が捨てる事だと思っております。
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消費生産を無限大に繰り返さないと成り立たないような世界というのはあり得ない。
私たちは、この事業を通して多くのことを学んできました。
私たちが何でもないと思っているようなことそのものがですね、一つの破局に繋がっていく。
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この中でどうしたらいいのかと、一つの道筋を見つけつつある。
これをひとつの気候変動に対する一つのモデルとして提示できるよう、今後も力を尽くしたいと思います。
文字起こしは、ここまで。
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2017.2.11【京都環境文化学術フォーラム】記念講演 #中村哲
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アフガニスタンの人々の必死に生きる姿と、彼らの手によって築かれた用水路であること、水の大切さ、気候変動の影響と人間の選択。晩年の中村医師が最も伝えたかったこと、知ってほしかった事ではないかと思います。https://t.co/WlbzgDHNkO