手縫いの革小物の作品の紹介から、気まぐれで野菜栽培の記録、
異文化で生活する人々の記録写真や猫のことなども綴ります

アフガニスタン東部とペシャワールの野菜事情

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 アフガニスタン東部とパキスタン西部ペシャワールの野菜事情について書いてみます。(独断と偏見と曖昧さが随所に含まれています)

まず、ペシャワールという地域は、元来パシュトゥン民族が住むアフガン側の領域であったため、パキスタン領となった現在でもパシュトゥン民族(パキスタン国籍)が生活者の多くを占めています。(大英帝国によって分断)

そのため、食や生活の文化もアフガン色が強いところです。

 

面白いことに、どちらも日常的にお茶を愛飲する文化でありながら、アフガニスタン側では緑茶を好み、パキスタン側ではイギリス統治時代の影響からか、紅茶やミルクティーを好んで飲んでいます。そしてガーデニングも同様で、髭面の男性たちも庭の草花の手入れを好んで行います。

 

主食であるナンは小麦粉から作られ、トウモロコシ粉をナンのように平たく焼いたもの(パラタみたいなの)も地域によっては食されています。

お米(長粒米)も好んで食べられますが、水の豊富な地域でないと栽培に適さないため、ナンに比べて高価なものとされています。

そのため、水資源が豊富な地域では米と小麦の二毛作、水資源が乏しい地域ではトウモロコシと小麦の二毛作というのが一般的のようです。

 

アフガニスタンでは、今も昔と変わらず農業が主要な産業となっていますが、

以前(ソ連侵攻前?)は100%に近い自給率であったのが、現在進行中の大干ばつの影響を受けて40%を下回っているとのことです。

干ばつの影響以外にも、外国からの侵攻や内戦化により離村せざるをえず、水利施設や農地の管理が行えなくなったことも大きいと思います。

現在は外国からの援助金によって食料を輸入して賄えてしまっていることで、逆にこの深刻な事態が表面化されず、干ばつ対策が後手に回っているというのが現状のようです。

 

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さて、こちらはペシャワールの町中にある、普通に見られる八百屋さんです。

季節によって入れ替わりますが、一般的に見られる野菜は、

トマト、ナス、ピーマン、唐辛子、胡瓜、人参、いんげん、カリフラワー、キャベツ、ミニレモン、レタス、蕪、大根、赤玉ねぎ、ジャガイモ、グリーンピース、ネギ、ニラ、ニンニク、生姜、里芋、ほうれん草、オクラ、ゴーヤ、トウモロコシ(硬粒種かな)、パクチー、その他香草類など、日本で見られるものと同じような野菜が並んでいます。

豆類では、ひよこ豆、レンズ豆、ルービアと呼ばれる大粒のあずき豆 が好んで食べられていますが、大豆は見られません。(ヨーロッパ大陸の例として、大豆と共生できる根粒菌が土壌に居ないため栽培不適合であるという記述を読んだことがありますが、ここでも同様の理由があるのかもしれません。)

他にサトウキビの栽培も盛んで、加工されたものは黒砂糖として出回り、生のものは搾りたての ジュースとして街中で売られています。

ただ、コップがほぼ使いまわしで、大きなバケツに汲んである水でジャブジャブ洗って、「はいどうぞっ!(満面の笑顔)」というところが多いので、慣れるまでは抵抗があると思います(笑)衛生的にも。

 

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露店の八百屋では天秤での量り売りが殆どで、1/4㎏、1/2kg、1㎏という単位で購入していきます。

それらを計る重石はきちんとしたものもありますが、中にはその辺から拾ってきたであろう玉石にマジックペンで「1㎏」と書かれたものなどもあるので、正しいかどうかを信じるかはあなた次第といった感じです(笑)

個人的には、規格が揃ってパッキングされた野菜よりも、一つ一つ個性の違う野菜を手に取って選べる方が面白く、日常の娯楽が限られている中、こういった八百屋に行くのが楽みのひとつでした。

 

品種の違いや土地柄も影響しているのでしょうが、根菜類は細身のものが多いです。

人参はアフガニスタンが原産地という記述もあるくらいで、色は京人参のように赤みが強く、香りや味も濃厚です。

蕪はヨーロッパの品種で見られる肩の部分が紫色のものが主流で、直径10~15cm前後としっかりしており、みずみずしくて美味しいです。

カリフラワーに限っては、日本で見るものよりも一回りも二回りも大きいものが多いです。

しかし何故かブロッコリーは見たことがありません。

噂では、ドイツのとある団体が普及に向けて栽培に取り組んだようですが、食味が合わなかったらしく、広まらなかったとか。

白菜も見かけることはありますが、外国人が好んで買うだけで現地の人達は食べないようです。

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栽培に適していると思われるサツマイモも、不思議と見かけないです。

一時、アフガニスタンでの普及に向けて栽培を試みた取り組みでは、「砂糖をまぶしたジャガイモみたいに甘い!!」と大好評だったと聞いています。

食べ方も焼き芋ではなく、フライドポテトが好みのようです。

 

そして、「ツルさえあれば増えるらしい・・・」という噂が流れると、夜な夜なツルが盗まれるという珍事が頻発していたとか(笑)

ただ、種イモの保存と越冬方法に苦労していたようですので、頓挫してしまったのかもしれませんが、現地に適した品種の選定と栽培方法(管理含め)が確立・認知されれば、徐々に広がっていくような気はしています。

 

いろいろなケースを見ていて感じたのは、どれほど栽培に適した作物でも、その土地の食文化に合わない限り、また、人々に好んで食べてもらえない限りは普及しないのだと感じました。

さらには、食味に合う調理法を見出すことも重要だなことだと思います。

ただし、非常に保守的な面もあるため(良い意味で)、馴染みのない調理法で調理しても、まず受け入れられにくいので様々な工夫が求められます。

 

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↑ ここはアフガン東部ジャララバード市内のベジタブルマーケットで、露店の八百屋がズラリと連なる一角。この日は車内からパシャリ。(2015年)

 

↓ こちらはアフガニスタン東部の奥地にあるイケイケな八百屋さん(2004年)

(奥の怪しいお兄さんは野菜をオマケしてくれるのですが、少年はびた一文まけてくれないツワモノでした 笑)

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以前、個人的な好奇心でアフガンへ持参した大葉とモロヘイヤを蒔いてみたところ、

大葉は果樹の下で毎年自生えするようになり、一部の人だけに好まれて密かに自生していますが、広まることは無いでしょう(笑)

そして栄養価の高いモロヘイヤこそ栽培、食味に適しているはずと思い、収穫してスープや現地の調理法で食べてもらったところ中々の好反応を得ました。(上の写真)

 

ただ、一時帰国の際に、「モロヘイヤの種子には強い毒素があって、食べると死ぬかもしれないので、人にも家畜にも食べさせては駄目っす」と、口を酸っぱく繰り返し伝えたことが仇となり、いつの間にか「あいつ、俺たちに毒草を喰わせようとしてるぞ・・・やべーなおい!」という良くないイメージが出回った結果、誰も近寄らなくなり枯れていったようです。

でも、宿舎の庭で栽培していたものだけは、ちゃんと食べて種子が実るところまでいったようで、次の夏には大葉同様こぼれ種で発芽し、「今年は種を採って田舎に持って帰るんだぃ」と言ってくる人が居て嬉しかったです(笑)

 

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アフガニスタンの土壌はアルカリ性が強く、気候も夏は50度越えと厳しい環境ですが、水が豊富な地域では上手に生育している様子を見かけます。

 

しかし一般的に有機物は乏しく、動物の糞は天日で固めて燃料に使うため、余程条件に恵まれていない限りは堆肥として利用されにくいと思います。

土質は色が白く粒子は細かく、加湿状態では粘性が増し、乾燥するとコンクリートのような硬さになり、日本で触れる土とはだいぶ異なる印象を受けます。

 

どうみても痩せているようにしか見えない土地でも、長年農業で生計を立ててきた人たちには作物の実る土地かどうか(肥えてるかどうか)の見分けが付くようです。

実際、数十年放棄されていた土地でも、ひとたび水が流れるようになると、僅か3か月程度のうちに一面緑一色に変わり、翌年には小麦の豊作を迎えていました。

恐らくは、河から引き入れる水に含まれる養分が豊富なこともあるのだと思いますが、それ以上にお天道さんの力の凄さを改めて感じました。

 

そんなことを思いながら、日本は作物の栽培にはとても適した土地なんだなぁと、しみじみ感じた次第です。

おしまい。

 

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